専門分野
画像処理・コンピュータグラフィックス.また,これらに基づく人間の情報理解を支援するための提示手法や映像表現に関する研究を行っています.具体的には,人間が直接見ることのできない情報を提示する(情報の可視化),複雑な情報や複数の情報を単純な形に置き換えて提示する(情報の統合),情報の理解に要する時間を短縮して提示する(情報の要約)などをキーワードとし,情報を視覚的に理解しやすい形に加工し新たな価値を与える,また,これを発展させ人間と人間,人間と機械とを視覚的につなぐ,円滑なコミュニケーション手段を確立することを目指しています.
松江高専での研究テーマ
初心者の反復練習支援のための映像提示システムの開発とそのスポーツへの応用
スポーツ競技において,初心者が反復練習をする際に,自身の動作と手本となる動作とを比較し,その違いを実時間で提示するシステムを開発しています.動作の改善すべき場所を示すことにより,反復練習を支援します.
現在は,このような映像提示に基づく練習システムにおいて,手本を忠実に再現できる・継続的に再現できる映像とはどのようなものか,実験を通じて調査しています.
プロジェクションマッピングの教育への応用
プロジェクションマッピングというと,映像を大きな建物に投影し多くの人で鑑賞するというイメージがあります.
本研究では,プロジェクションを卓上等の小さな物体に行い,これを少人数で観察させることで,教育を支援する取り組みを行っています.これまでに,医療用テーピングの貼付け支援システム,また地球を自由な向きから観察できるシステムを開発しています.
これまでの研究テーマ
スポーツ動作分析の支援を目的とした身体機能情報の可視化システム
動作中の人物の要所部位で計測した身体機能情報(筋電位など)の計測値を,その人物の骨格を表す3Dモデル上の対応する部位に色の差異としてマッピングし提示する手法を開発しました.これにより,指導者や選手といった利用者が,動作フォームの変化に伴う各筋の負荷状態とその時間変化を,視覚的かつ直感的に理解することを可能にしました.
研究論文・デモムービは,芸術科学会のウェブサイト(こちら)で見ることができます.
反復練習支援のための身体機能情報の実時間提示システム
スポーツの反復練習時に,自身の動作確認と熟練者の動作との比較が定量的かつ直感的にできる提示手法の開発を試みました.具体的には,練習者の身体機能を練習者自身に実時間で提示するシステム(ビジュアルフィードバックシステム)を開発しました.また,練習者と熟練者との身体機能の差異を示すアニメーションの生成方法を提案しました.
柔軟組織モデルと物理シミュレーションに基づく人体の実時間変形シミュレーション
人体組織を弾性などの変形特性を有する立体モデルで表現することにより,動作時に身体各部の微細な変形を提示できるシステムを開発しました.また,動作中の組織変形における特徴量を計測し色の変化として可視化しました.
運転者への提示を目的とした画像処理技術に基づく車載カメラ映像の視認性改善
降雨時における車載カメラ映像中の視野妨害領域の検出とその復元を目的とし,フロントガラスに付着する雨滴の検出,およびその修繕を試みました.
研究協力
「アーチェリー競技におけるパフォーマンス定量評価」における技術サポート
民間企業と共同で,アーチェリー競技における的中点の定量化と選手へのフィードバックを目的とした解析法の開発(共同),および解析法に基づくソフトウェアの開発を担当しました.
主な業績
論文
稲葉 洋, 瀧 剛志, 宮崎慎也, 長谷川純一, 鳥脇純一郎: 弾性骨格筋モデルに基づく組織変形と人体動作生成シミュレーション, 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 10, 4, pp.619-626 (2005.12)
稲葉 洋, 瀧 剛志, 宮崎慎也, 長谷川純一, 肥田満裕, 山本英弘, 北川 薫: スポーツ動作分析の支援を目的とした人体センシング情報の可視化提示法, 芸術科学会論文誌, 第2巻第3号 pp.94-100 (2003.9 芸術科学会論文誌 第二回論文賞)
国際会議(査読付き)
Qieshi Zhang, Hiroshi Inaba and Sei-ichiro Kamata: Adaptive Histogram Analysis for Image Enhancement, PSIVT 2010 (Pacific-Rim Symposium on Image and Video Technology), pp. 408-413 (Nov. 2010) [SINGAPORE]
Hiroshi Inaba, Tsuyoshi Taki, Jun-ichi Hasegawa, Shin-ya Miyazaki, Mitsuhiro Koeda and Kaoru Kitagawa: Visual Sensing in Sports Motion Capturing, IWAIT 2006 (International Workshop on Advanced Image Technology), no.S01-1, pp. 6-11 (Jan. 2006) [Okinawa JAPAN]
Hiroshi Inaba, Shin-ya Miyazaki and Jun-ichi Hasegawa: Muscle-Driven Motion Simulation Based on Deformable Human Model Constructed from Real Anatomical Slice Data, AMDO 2002 (Articulated Motion and Deformable Objects Second International Workshop), pp. 31-42 (2002.11) [Majorca SPAIN]
受賞
2013年 東京エレクトロンデバイス株式会社主催Kinect for Windows Contest 2013 本戦出場(株式会社WindyLabでの職務)
2004年 芸術科学会論文誌 第二回論文賞
1999年 電気関係学会 東海支部大会 奨励賞
研究助成
2021年 令和3(2021)年度科学研究費助成事業(科研費) 基盤研究(C)「「見よう見まね」を拡張する上達をうながす映像を用いた新たな練習支援法」(期間2021-2023)
2018年 公益財団法人マツダ財団: 2018年度科学技術関係事業助成「バーチャルリアリティを体験:スマホとダンボールメガネを使って360度ぐるっと見てみよう」(期間2018.8-2018.12)
2014年 公益財団法人栢森情報科学振興財団: 平成26年度研究助成「初心者の動作習得に向けた練習支援映像の実時間提示システムの開発」(期間2014.11-2016.11)
2013年 北九州市: 平成25年度中小企業技術開発振興助成金「Kinect(キネクト)センサを用いた薬品ピッキング検査システムの開発」(株式会社WindyLabでの職務)
2009年 財団法人大川情報通信基金: 2009年度研究助成「車載カメラ映像中の前方遮蔽に対する空間的,時間的整合を伴う画像復元」(期間2010.3-2011.3)
特許
2019年 第6491776号 稲葉洋,恒吉和幸,中村行延:“錠剤認識又は識別システム及び方法”
2014年 第5492333号 中村行延, 稲葉 洋:“ディスプレイを使用した薬剤ピッキング支援システム”(株式会社WindyLabでの職務)